大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)3524号 判決

被告人 野崎真哲

〔抄 録〕

第一点。

論旨(イ)及び(ロ)について。

所論において、被告人の就任当時、すでに、前任の出納係関係の職員が、その勤務する東京管区気象台の職員や外部の者に浮貸した金三、四十万円あり、原審認定にかかる被告人の横領金額の中には、その穴埋に金繰した分があるに拘わらず、原審が、前後四十六回に亘る横領を一括して自己の用途に充てるため着服横領したものと認定したのは、判決に影響を及ぼすべき事実誤認の過誤を冒したものであると主張しているが、記録及び証拠によるも、被告人の前任者からの事務引継当時、その前任者が、公金の中からいわゆる部外者に貸し付けた未回収の分が約二十万円あつたこと、及びその分は、昭和二十五年八月下旬までに六万円を残し、返済されたことは、これを窺い得ないわけではないけれども、右二十万円の分は勿論、所論いうが如き三、四十万円につき、被告人において穴埋のため金繰りした分が、原審認定にかかる横領金額の中に包含されているということは、これを確認するに由がない。従つて、被告人の前任者の浮貸にかかる金員の穴埋をするため金繰した分が原審認定の横領金額の中にあるとの点を前提として原判決を非難する所論は当らない。ただ然し、原判決挙示の証拠によれば、原審認定にかかる横領金額合計二百二十五万五千五百八十五円の中には、東京管区気象台のいわゆる部内者や部外者に貸し付けた分をも含むことが窺い得られるに照らすときは、原審が、その横領金額につき、単に遊興その他自己の用途に充てるため着服横領したものと認定した点については、一応事実を誤認した過誤があるとのそしりを免かれないが、原判決が、その判示において、第三者の用途に充つるためにしたという趣旨を明らかにしなかつたとしても、被告人が、自己の占有する他人の物を横領した点において彼此同一であるのみならず、本件事案の態様に照らし、その事実誤認が量刑の上に影響を及ぼすこともないから、これが事実誤認の故をもつて原判決に影響を及ぼすことの明らかなものがあるということもできない。

なお、所論によれば、原審は、前後四十六回に亘る横領を一括して自己の用途に充てるため着服横領した事実誤認があると主張するが、被告人が、原判示期間内に前後四十六回に亘つて自己の用途又は、第三者のために費消した各個の所為は、その手段において所論いうが如き三つの手段が採られたとするも、証拠上犯意を継続して行つたものであることが明らかであるから、これらの所為を包括して一個の業務上横領の罪と見るを相当とするをもつて、その趣旨に出でた原判決は正当であるのみならず、所論は、原審が自己の用途に費消した複数の所為を包括して一個の業務上横領の所為と判断したところを各別罪を構成する併合罪であると主張するもので、明らかに被告人の不利益に帰し、上訴の理由として適切でない。所論は採用できない。

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